資格 | 有限会社 海老原建築

有限会社海老原建築

Column

2024.01.09

資格

別に隠してるわけでもないんですが、特に説明する場面もない、という話題ですが、本業と別で、資格学校にて講師を勤めています。一級建築士の製図試験の講師です。


昨日はその合格祝賀会でした。



私自身、一級建築士を取得したのは平成24年。12年前、28歳の頃でした。学科3回、製図試験3回の5年で6回、当時の試験会場の専修大学へ赴いたものです。専修大学はなにも悪くはありませんが、二度と専修大学は行きたくありません(笑) 5年もかけてよく取得したもんです。。

講師をはじめたのは、平成25年から。かれこれ去年で11年目となりました。担当した受講生さんは111人。

一級建築士の試験、私の担当している製図試験は、二次試験になります。学科を突破した受験生さんが、現行の受験制度だと、3回製図試験を受けるチャンスをもらうことになります。ちなみに国家資格です。年一回のチャンスしかありません。

平成21年から試験制度の見直しがあり、製図の試験は6時間30分という長丁場になっています。
6時間30分て。。とお思いでしょうが、実際には時間が足りません。(そうだそうだと思ったあなたは試験経験者。)

さらに、平成30年からは法規ミスが厳格になってきてしまいました。詳しくは書きませんが、作図ミスで扉一つに「特定防火設備」の明示を書き忘れると、その瞬間に一発失格というあまりにも厳しい採点。



毎年、学科試験日あたりに製図試験の用途の発表がありまして、昨年の製図課題は「図書館」でした。

なにもこんなおしゃれ図書館(これは国際教養大学の中嶋記念図書館。なんと24h365日開いている。。というか、構造設計を担当されたのは山田憲明さんだったとは。)を設計せい、という課題ではありません。


こういう普通の感じの図書館の設計です。(これは国立国会図書館。普通、というのは外観の単純なイメージだけ。なんと設計は前川國男。。1968年竣工だそう。築56年とは思えない。。普通とか書いてすいません。。)

今回、作図の要求に「ブックポスト」なるものが要求されました。

こういうやつ。

図書館が閉館のときに、外部から返却できるポストですね。



ただエントランス付近などに設ければいいだけのちょっとした要素なのですが、フタをあけてみると今回はこのブックポストを書き忘れでもした場合、「不合格」、という採点基準が試験元から発表されています。

・・・ただちょっと形を描いて、「ブックポスト」と6文字書くだけ。「それだけなのだから描きなさいよ」というふうに言われてしまえばそれまでですが、これがないだけで一発アウトというのは、今までで一番衝撃の採点基準です。

この試験、ドツボにはまると10年以上受け続ける人もザラです。

学科試験は、まだ「正解」があるので勉強がしやすいですが、こと製図試験においては「何がダメで不合格だったのか」がまったくわからないまま「不合格」になります。試験元はそのへんを開示してはくれません。国家試験として、あまりに理不尽。

声を大にして言いたいですが、昔一級建築士の取得した人(特に平成21年よりも前の前試験制度の取得者、また平成29年のリゾートホテルまでの試験での取得者。)は、「製図試験なんて〇〇でしょ」と安易に言わないで欲しい。

年々資格試験は難化していて、想像を絶する学習ストレスにさらされています。そこはおもんばかって欲しい。

とはいえ、建築関係者である我々はさておき、依頼して頂けるお施主さんにはそんなことはまったく関係ないわけで。

俗にいう「姉歯事件」で、「建築士」の信用が失墜した歴史があります。

(一級建築士が行なった国土交通大臣認定構造計算ソフトウエアの計算結果を改竄した形での構造計算書の偽装を、行政や民間の確認検査機関が見抜けず、承認した事例。地震多発国の日本において、建築基準法に定められた耐震基準を満たさないマンション、ホテル等が建設されていた。当時、大きな社会問題に。2005年の出来事。)

姉歯事件を受けて、建築基準法も改正になり、どんどん手続きも難しくなってきています。

資格を取得しておしまい、なのではなく、その後も建築士としての勉強が一生続きますし、必要です。

私も講師側として増長することなく勉強して、建築主に信用・信頼されるように努力していかないといけません。