個人的考察【ハウスメーカー】 | 有限会社 海老原建築

有限会社海老原建築

Column

2022.07.15

個人的考察【ハウスメーカー】

設計士による個人的考察です。

大手ハウスメーカーさんや、地域のハウスメーカーさんです。

メリットデメリットを簡単に挙げていこうかと。
 ※個人の勝手な見解です。
①大手ハウスメーカー(住友林業さんや大和ハウスさんとかですね)
〇メリット
 ・最低限の品質(耐震性能・断熱性能など)は担保されやすい
 ・ある程度施工マニュアルがしっかりしている(はず)なので、施工品質が均一に保たれる可能性は高い
 ・細かいことを決めなくても物事が進む
  (会社の決まり事が結構あるので施主は選択する必要がない)
 ・大手という安心感(メンテナンス等含め)
●デメリット
 ・コストが高い(宣伝費にかなり費用をかけてます。それが各住宅の建築費に乗っかっている)
  ※昔、某大手メーカーさんの展示場で実際に聞いてみたことがありますが、「坪単価〇〇万円くらい」と言われたあとに「それはどこからどこまで入っている金額ですか?照明は?外部の給排水などは?」と聞くと、さらに坪単価が上がりました。
 ・プランニングや仕様など、ある程度の範囲からの選択になる
  ※「100%の自由設計」はほぼ不可能です。
 ・重箱の隅をつつくような要望はなかなか難しい
  (付き合えば付き合うほど得しないので)
  また、営業さんが最初の設計を担当されていることも多い印象
 ・営業担当がコロコロ変わる可能性大


②地域のハウスメーカー
〇メリット
 ・費用感がつかみやすい(だいたいの金額をうたっているところが多い)
 ・細かいことを決めなくても物事が進む
  (会社の決まり事が結構あるので施主は選択する必要がない)
 ・その地域での実績が多い、という安心感
●デメリット
 ・設計力に乏しいことが多い(そもそも設計料を計上していない。それなら仕方無い。)
 ・プランニングや仕様など、ある程度の範囲からの選択になる
  ※「100%の自由設計」は絶対不可能です。
   「基本的に枠材は無垢材等にしてほしい、
    それでもって浴室入口枠はヒバ材、窓枠はオーク材で・・・」
   「造作キッチンに合わせてダイニングテーブルも造作して」
   「一部床根太を204材にして表しにしたい」
   などなどそんな対応はおそらくできない。
  (大手ハウスメーカーも同じだとは思います。)
 ・施工の精度については当たり外れが激しい
  ※実際に知人の新築住宅の現場検査を依頼されて実施したことがありますが、現場の監督の管理能力・知識は驚くほど低かった。びっくりしました。NGなことをNGとわかっていない。どこの会社とは言いませんが。
  少なくとも自分が昔現場監督をしていた時は施工不良は絶対ないようにとプライド持ってやってました。
 ・営業担当がコロコロ変わる可能性大
 ・耐震性能、断熱性能等は会社によって雲泥の差


◇総括
自分であれこれ決めるのが得意ではないし、メーカーの方である程度決めて欲しい、お金はあるからとりあえず無難に大手にしておきたい、という人は大手ハウスメーカーでもいいとは思います。地域のハウスメーカーよりは当たり外れは少ないでしょう。
そこまでのお金はないが、間取りや大きさなどが満足いけばそれでいい、という人は地域のハウスメーカー、という選択はあり。という印象ですね。


ただ、自分で施工品質を確認したりすることは不可能に近いので、施工精度的に外れを引いたときはかなり恐ろしいと思います。(例えば、耐震等級3を取得等していれば耐震性能は担保されることも多いですが、性能評価員は建物を完成まですべて検査してくれるわけではありません。)


また、建物の印象は、「ディティール」でかなり変わります。窓廻りの仕上げ方(「開口部」はほんとに大事。)や屋根の仕上げ方、はたまた巾木のサイズ感や照明スイッチの仕様、などなど。実際は「壁紙か木製パネリング」か、という材料の違いよりも、「外部の風景を切り取るためにサッシのフレームが邪魔だから隠そう」「外観をよりシンプルでソリッドに仕上げるために、余計な部材を極力入れないでおこう」的な違いの方が空気感や雰囲気が変わると思っています。つまりどう「設える(しつらえる)」かということですね。ただ自然素材を使ったからと言って上質な空間になるわけでもありません。(自然素材だから快適です、とうたっているところもほんとに多いですね。自然素材使ったって暑くて寒かったら健康には過ごせないし、自然素材使えばいいってもんでもない。)
こういった対応はおそらくできないでしょう。


注意して欲しいのは、間取りが気に入らないと思っても、メーカーさんとしては無難で安全な構造計画になっていたりしますし、ディティールは決まった仕様にしていることで合理的でスムーズな施工が出来たりもします。つまるところ設計費用や施工の労務費を抑えることができます。そういう経営構造の会社だということです。おそらくハウスメーカーと呼ばれる会社で建てる家が一番多いでしょう。ということはこういう経営手法が成功しているということでもあります。(仕様を限定することで仕入れコストを下げたりということも可能です。これは企業努力だとも思います。)野暮ったい外観の住宅がずらっと立ち並ぶ日本の現状の風景もこういう結果の成した姿なんでしょう。

別にハウスメーカーさんが悪いと思っているわけではありません。こういう特徴や経営構造をしっかり理解した上で門を叩くべきだと思います。
もちろん本当にしっかりした営業さん、設計担当さん、現場監督さんはハウスメーカーにもたくさんいると思います。
結局は人だとは思います。
ハウスメーカーの場合の施主・設計・施工等の系統図を簡単に自分なりに作ったのでUPしておきます。
ご参考までに。